重度巻き爪・剥離爪ケアの選択：なぜ「あえて矯正しない」のか？～自律的な爪の再生を促すフットケア～

先日、訪問ケアでご縁をいただいた施設入居者様の、重度な巻き爪と剥離した爪のケアを行いました。Before写真でお見せした通り、重度の巻き込みが見られましたが、今回の施術ではあえて巻き爪矯正具を使用しないという選択をしました。

多くの方が「巻き爪＝矯正」とお考えかもしれませんが、私たちのフットケアでは、お客様一人ひとりの爪の状態を詳細に評価し、「その爪にとって何が最善か」を深く掘り下げてケアプランを組み立てます。今回はその理由と、ケアの全貌についてお話しします。

1. なぜ、重度巻き爪に「矯正具を使わない」選択をしたのか？

今回のケースでは、以下の理由から、安易な矯正具の使用を避けました。

痛みや炎症がない：幸いなことに、ご本人は巻き込みによる痛みや炎症を全く訴えていませんでした。緊急性を要する疼痛緩和が不要な場合、無理に矯正力をかける必要はありません。
爪が非常に柔らかい：長年のトラブルにより、爪が全体的に脆弱で柔らかい状態でした。このような爪に無理に強い矯正力を加えると、爪が折れたり、さらに剥離が進行したりするリスクが高まります。まずは爪本来の健康を取り戻すことを最優先すべきと判断しました。

今回のケアで最も効果を発揮したのは、徹底した「角質除去」です。爪下の硬く堆積した角質と、剥離していた部分を丁寧に、そして安全に除去しました。

その結果、驚くべきことに、施術前の巻き込みの角度が100度から50度へと大幅に改善しました。これは、巻き込みの主な原因が、爪の内側を圧迫していた物理的な角質の堆積にあったことを明確に示しています。

この結果から、私たちは爪の「自律的な改善力」を最大限に引き出す方針を選択しました。余計な矯正力に頼るのではなく、爪が本来持っている「真っ直ぐに伸びようとする力」を邪魔する要因を取り除くことで、爪自身の力での再生を促します。

施術後の爪先は、数ミリ残して仕上げています。これも、再発予防のための非常に重要なポイントです。

今回のケアで、爪が自力で回復するための土台は整いました。今後は、以下のステップで長期的な視点でのメンテナンスを行います。

定期的なクリーニングと保湿：爪が先端までしっかりと伸びてくるまで、爪下の不要な角質を定期的に除去し、爪と周囲の皮膚の保湿を徹底します。これにより、感染や再肥厚のリスクを抑え、爪が健やかに成長できる清潔な環境を維持します。
矯正具の再検討：爪が健康な状態に育ち、安定したら、その時点での巻き込みの残存度合いに応じて、改めて矯正具の使用をご提案します。無理のないタイミングで、最適な方法を選択します。